I believe １
食堂でアスランの分の食事を受け取ると、「お大事にって言っといてね」と、声を掛けられた。
「はい」と素直に答えたキラは、それを持って部屋へと戻る。
酷い怪我をして運び込まれ、この間まで、医務室の住人だった「親友」が、今朝、辛そうだったからベッドに括り付けてきたとそう言うと、皆が、口々に彼を気づかってくれる。
しかし誰も・・・彼が、本当に「括り付けてきた」ことなど、気づきもしないのだ。
「あ・・・はぁ・・・・」
ドアをあけたとたん、聞こえた艶やかな声に、キラはそっと笑った。
さすがに気づいたらしいアスランが、唇を噛むのがわかって、それでも隠し切れない喘ぎに、更に笑みが深くなる。
アスランは今、両手首を後ろでひとまとめに、手錠と拘束索を使われて、二重にベッドのパイプに括り付けられていた。
両足も、きちんと着込んだスラックスの上から、足首、膝、腿の三箇所で、開かないように括られている。
通常のアスランならば、これでも安心はできないけれど、それでも彼を喘がせているものが、抵抗する力を奪っていた。
「キ、ラ、もう・・・っ」
滅多に聞けないアスランの泣き言を楽しみながら、キラはことさら尖った声を出してみせた。
「あのさ、これ入れるときにも言ったよね、アスラン。言うこと違うよ？他にあるでしょ」
食事のトレイを机に置いて、ぐい、と、引き締まった双丘を確かめれば、また、高く声が上がる。
その奥で、彼を苛み続けているものの動きが、薄い肉越しに伝わってくる。そこをきつく揉みしだいて、言葉の続きを促した。
「ご・・・め、もう、しな・・・・」
アスランの必死の謝罪を、キラはそれでも信用しない。
「ほんとかな？だってアスラン、泣いてる子放っておけないでしょ。またあのシンって子が泣きついてきたら、またカラダで慰めてあげちゃったりしない？」
キラだけの、大事な大事なアスラン。
そのカラダに、誰かの痕跡があるのは、抱けばすぐにわかった。
アスランは、一晩だけだと言うけれど、ならばよほど印象的な抱き方をしたのだろう。
「し・・・な、もうっ・・・」
身を捩ったアスランな、ひくりとカラダを震わせる。
「ここもさ、僕じゃなくてもいいみたいだし」
拘束索で強制的に閉じられている場所を探り、初めに押し込んだ時よりも、幾分出てしまったものを、ぐっと押し込んでやる。
「駄・・・目っ、あ」
びくん、と、拘束された体が跳ね上がり、そうして、しなやかな体が何度か痙攣する。
「ほら、またイっちゃった」
白い軍服の閉じられた脚の間は、厚い生地越しにもわかるほどに、ぐっしょりと濡れていた。
「何回イったの？１回や２回じゃないよね」
意地の悪い言葉。それに、アスランの顔がくしゃりと歪む。
「キ・・・ラ、キラぁ・・・・」
本気で泣き出したアスランに、これ以上苛めても意味がないことを悟り、キラは手すりに括りつけた、腕の拘束索を解いてやった。
手錠はそのままに、足を先に自由にしてやり、そうして濡れた軍服を引きずり下ろす。
「取ってあげるから、足広げて」
ひくひくと震える足を掴むと、アスランはおずおずと脚を開いてみせた。
ほろほろと涙を溢す、キレイキレイな翠の瞳。
その端に、ちゅっ、とキスをして。
引きずり出したものは、最後までアスランのそこをいやらしく震わせて、彼を、泣かせてくれた。
「やっ、あ・・・・・」
キラに向かって、脚を開いて。
こうやって従順に、キラの望みを叶えるアスラン。
君がこんなだから、僕は。
「ちゃんと反省してよ、アスラン。君、危なっかしくてしょうがないよ。僕は、君を誰かと共有できるほど、心広くないから」
「ご、め・・・」
謝ったアスランの、最後に残された手錠を取ってやると、彼は疲れた腕をするりと伸ばし、キラに身を寄せてきた。
そう。君がこんなだから、僕は。
涙と汗に濡れた頬にキスしてやって、やさしく髪を撫でてやる。
離れていた間に、随分痩せてしまった背中を抱いて、キラは言葉でなく、体で、折檻に耐えたアスランを労わってやった。
「キラ・・・」
しがみ付くアスランの、濡れた声。
まずいな。こんなに苛めた後だから、やさしいことだけ、してあげたいのに。
アスランを、抱いてしまいたいと、思う。
もっと泣かせてしまいたいと思う。
それでも我慢して、軽く唇にもキスしてから体を離そうとすると、逆に、アスランの方からしがみ付いて来た。
しかも、キラの下肢に手を伸ばし、軍服のベルトを外してその下に手を差し込んでくる。
「アスラン・・・？」
驚いたキラに、アスランは視線を合わせないようにして、ちいさな声で囁いた。
「頼、む。あんなの・・・ずっと、だったから。キラが・・・欲しい・・・・・」
こんなこと、いつも恥ずかしがって言ってくれないのに。
アスランは、それよりもずっと苦しそうにして、また、新しい涙をこぼしている。
「いいの？」
聞けば、こくんと頷いて。
熱のこもった震える指が、それでも丁寧に、キラをそこから取り出して。
「ん・・・」
膝を立てるのも辛いだろうに。それでも小さく喘いだアスランは、自分から、キラを飲み込んでいった。
「ん、あ・・・」
「ア・・・スラン・・・・」
ずっとずっと蹂躙されていたアスランの中は、熱くて。もう、とろとろに蕩けていて。
キラを、深く包み込む。
「は、ぁ・・・・」
苦しげに息をつきながら、それでも精一杯腰を揺するアスランが可愛くて、キラも緩やかに、アスランを突き上げてやった。
「ああっ・・・あ、キ、ラ・・・・ぁっ」
アスラン。
ずっと、ずっと大好きだった。
敵として、目の前に現れるまで。
離れていてさえも、ずっと、誰より近しい存在だった。
そうして、憎んで、戦って、再び隣に立てるようになって。
抱き合うように、なって。
前よりも、もっと、近くなったと思ったのに。
近くなった分、よく見えるようになった彼の中は、キラの知らない間に、どうしようもなく、壊されてしまっていて。
いや、もしかしたら、キラ自身が、壊してしまったのかもしれないけれど。
キラの大事なアスランは、キラの大事なアスランのまま。
もう、誰も。
自分自身や、キラさえも、信じることができなくなっていたのだ。
キラは、切なく喘ぐアスランの腰を掴むと、背中を支えてシーツへ倒した。
「くぅ・・・ン」
中を抉る角度が変わって、アスランが小さく悲鳴を上げる。
「ごめん。でも、イイでしょ」
こくこくと頷きながら、可愛い声で喘ぐ彼にキスをして、キラはアスランを、精一杯、やさしく愛してやる。
「あ・・・あぁ・・・はんっ・・・・・」
アスラン。
かわいいアスラン。
かわいそうな、アスラン。
君が、僕を信じてくれなくても。
僕の愛情を、幻だと思い込んでいたとしても。
それでも、僕の想いは本物だよ？
「くっ・・・」
「はんっ・・・」
彼の中に、思い切り注ぎ込み、キラは何度言ったか知れない言葉を繰り返した。
「あいしてるよ、アスラン」
その時見せた、アスランの笑顔。
ただただ、幸福そうな、笑顔。
その言葉を、信じても、いないくせに。
それでもキラは、その笑顔見たさに、何度でも囁く。
信じてもらえないと知っていても。
意味のないことだと、知っていても。
「ああ・・・・キラ。俺も、だよ」
その、自覚のない嘘を、聞くために。